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三年ほど前、このビルのオーナーである田中さんから電話がありました。自分が持っている朝霞の土地の相談があるとの電話でした。
田中さんは、朝霞溝沼に約600坪の土地がありました。その土地は、駐車場として利用していましたが、最近駐車場の利用が少なく、三分の一くらいしか駐車場として利用されていませんでした。田中さんは、この土地の立地がそれほど悪いところではないので、駐車場よりもっと有益な利用方法がないかと私に相談してきたのです。
私は医療機関の開業と不動産関係の仕事をしていたので、医療ビルの建築が可能ではないかと思い、田中さんに医療ビルも場所によっては非常に有益な土地利用の方法なので、一度診療圏調査してみて、その結果医療ビルの建築が可能かどうか判断してみたらどうですか、と話しました。
田中さんは是非それをやってみてくださいと言いました。早速私はこの土地の診療圏調査を開始しました。まず現地に行ってみましたが、周りは中小マンションが十数棟建っており、その他、一戸建ての住宅や小規模のアパートがかなり建っています。そして、学校や工場も数多くあります。人口も、この土地を中心に半径1キロ内の人口は3万人以上ありました。その年齢構成も高齢者の比率がたかかったです。医療機関を見ると、各科目とも少なかったです。また、地域住民の聞き取り調査をしましたが、内科、整形外科、耳鼻科、そして皮膚科のお医者さんが欲しいと言う声が多くありました。
これらの調査結果を検討した限り、小規模の医療ビルなら十分運営が成り立つのではないかと判断しました。それを田中さんに伝えました。田中さんは、医療ビルだと地域住民の為にもなるし、建物としても長く利用してもらえるので、是非医療ビルの建築の計画を進めたいと言って来ました。
早速私は医療ビルの設計をしてくれる設計士さんを探しました。数社当たった結果、A設計事務所が経験もあり、意欲的だったのでこの設計事務所と設計を進めることにしました。ビルの設計にあたってポイントにおいた点は、まず医療ビルとして使いやすいこと、デザイン的にも優れた物であること、そして建築コストを不必要にかけないビルであること、以上の3点でした。
オーナーとも、十分に打ち合わせを重ね、設計案が徐々に形になってきました。特に、使いやすさとデザイン面は優れたものになりました。全体にゆったりとした作りでデザインもシンプルかつ明るい雰囲気のビルに仕上がりました。設計図上でそのように感じられましたが、実際に立ち上がってもその雰囲気はよく出ていました。周辺にそれほど違和感はないのですが、程よく目立ち、」かつ周囲に溶け込んでもいます。とにかく、明るいビルです。
設計も固まり建築施工の会社も決まったので、医療ビル建築の手続きを始めました。この土地は、市街化調整区域にあったので、市街化区域と違い土地整備が十分ではありませんでした。特に道路が未整備なので道路を整備しなくてはなりません。道路を整備するには、その道路に権利関係を持つ近隣の地権者さんの同意と協力が必要なのです。ここでは、4人の地権者さんがいました。
この4人の地権者に道路を作るについて協力を求めに行きました。3人の地主さんは出来るだけ協力はすると言ってくれました。しかし、1人の地主さんは快い返事をしてくれませんでした。というのは、この地権者さんは道路の入り口の部分の土地を持っていてその道路ができると色々と不都合が生じるのではないか心配したからです。
それについては、不都合が生じるというより、道路が出来る結果、周りの地権者さんに色々なメリットが生じるのです。ですから、その地権者さんの言い分はあまり筋が通らないように思いました。しかし、その方の協力がないと、道路は出来ないので5,6回足を運び説明に努めました。しかしそれでもOKの返事はくれませんでした。この地権者さんの協力が得られないと道路はできません。3ヶ月以上時間を費やしたのですが、やはり協力を得られません。どうしたものかと悩み、地主の田中さんは、それではもうこの計画を止めにしようかと言い出しました。その時、設計士さんが何か他の方法があるのではないか、それを調べてみる必要があるのではないかと言いました。そこで、市役所に行くと別の方法がひとつあることがわかりました。その方法をとると、少し費用はかかりますが、地権者全ての協力は必要ありませんでした。一部の地権者の同意があれば道路の整備は可能です。従ってその方法をとることにしました。
工期はだいぶ遅れましたが、道路が出来る目途がたったので、建物建築の準備に入りました。その後は、大きな問題も無く、建築は進みました。そして、今年の1月にビルは完成しました。現在、入居のクリニックは内科1科目ですが、順調に診療が始まっています。
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